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ポール・オースター『ガラスの街』(柴田元幸 訳)

 

ガラスの街 (新潮文庫)

ガラスの街 (新潮文庫)

 

 

「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開――。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。

 

ニューヨークの街を舞台に繰り広げられるミステリアスな物語。アマゾンのレビューでも多くの読者が語っているように、読み進めていくうちに自分の存在がぼやけて不確かになっていくような不安に駆られる作品だ。それはオースターがアイデンティティや自己存在といったテーマをこの作品に潜ませたからに他ならないだろう。「この作品の魅力は?」と問われて一言で答えられるようなものではないけれど、オースターの紡ぐ独特のことばと柴田氏による美しい日本語訳は一読に値する。