谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』

 

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

 

 

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」。入学早々、ぶっ飛んだ挨拶をかましてくれた涼宮ハルヒ。そんなSF小説じゃあるまいし…と誰でも思うよな。俺も思ったよ。だけどハルヒは心の底から真剣だったんだ。それに気づいたときには俺の日常は、もうすでに超常になっていた―。

 

2006年のアニメ化で一世を風靡した『涼宮ハルヒシリーズ』の第一作目。SFや哲学といった硬めのジャンルを、萌えという親しみやすい概念によって見事に中和してみせたライトノベル史に残る名作だ。本作の語り手であるキョンのウィットに富んだ独白やそれぞれが強烈な個性を放つ登場人物など、物語を構成する全ての要素が作品全体を面白くすることに一役買っている。そう、この作品は純粋に「面白い!」と言える物語なのだ。