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重松清『みんなのうた』

 

みんなのうた (角川文庫)

みんなのうた (角川文庫)

 

 

東大を目指して上京するも、3浪の末、夢破れて帰郷したレイコさん。傷心の彼女を迎えるのは、個性豊かな森原家の面々と、弟のタカツグが店長をつとめるカラオケボックス『ウッド・フィールズ』だった。このまま田舎のしがらみに搦めとられて言い訳ばかりの人生を過ごすのか―レイコさんのヘコんだ心を、ふるさとの四季はどんなふうに迎え、包み込んでくれるのか…。

 

田舎には良い面と悪い面がある。良い面としては、よく言われるように人情の暖かさや時間に追われることのない生活といったものが挙げられる。対して田舎の悪い面には、閉塞感や世間体が生み出す息苦しさ、そこに住む人々の無知や無学といったものがある。この作品はそういった田舎の二面性の中で、敗北感で傷ついたプライドを抱えながら葛藤する主人公のレイコさんを描いた物語だ。重松清は子供や少年・少女の未成熟な心を描き出すのがとても上手で、彼の作品に触れて「この主人公と同じ年の頃、自分も同じようなことを考えていたな」と想起することは多い。